MT5-Python Trading Dashboard の画面中央を占めるのが「銘柄パネル」です。XAUUSD を筆頭に 8〜10 銘柄を並べ、各銘柄ごとに BID/ASK・スプレッド・BIAS スコア、そして D1 / H4 / H1 / M15 の 4 時間足それぞれのトレンド判定と指標値を一覧表示します。 この記事では「BIAS スコアが何をどう計算しているか」を、実装ロジックそのままに解説します。
銘柄パネルが表示する 3 つの情報
1 つの銘柄行は、大きく分けて次の 3 ブロックで構成されます。
| ブロック | 内容 | 役割 |
|---|---|---|
| レート | BID / ASK / スプレッド | 現在のコストと約定環境 |
| BIAS スコア | −10 〜 +10 の方向性スコア | 4 時間足を 1 数値に集約 |
| 4 TF 詳細 | D1/H4/H1/M15 の trend・EMA・ADX・RSI | 各時間足の状態 |
採用している時間足と役割
本ダッシュボードは「マルチタイムフレーム・トレンドフォロー」を前提に、4 つの時間足に明確な役割を与えています。
| TF | EMA 期間 | 役割 |
|---|---|---|
| D1 | 200 | 大局・方向許可フィルタ |
| H4 | 50 | 主戦 TF (セットアップ確定) |
| H1 | 20 | エントリーゾーン精密化 |
| M15 | 13 | 執行トリガー |
重要なのは、EMA は「価格との位置関係」だけを見る点です。一般的な「移動平均線のゴールデンクロス/デッドクロス」のような 線の交差をシグナル化することはしません。あくまで「価格が EMA の上か下か」=「その時間足が上向きか下向きか」の方向確認に使います。
各時間足の「トレンド」はどう決まるか
1 つの時間足のトレンド方向は、EMA と ADX の 2 つで決めます。ロジックは単純です。
price > EMA かつ ADX >= 閾値 → 上昇 (+)
price < EMA かつ ADX >= 閾値 → 下降 (−)
ADX < 閾値 → ノートレンド (0 / 寄与なし) ここで ADX (Average Directional Index) が「方向の有無」を判定するゲートになっています。 ADX はトレンドの強さを測る指標で、値が低い = 方向感のないレンジ相場を意味します。 EMA で上下を判定しても、ADX が閾値未満なら「まだトレンドと呼べない」として 寄与ゼロに扱います。 これにより、レンジ相場での「だましの方向シグナル」を構造的に排除しています。
BIAS スコア = 4 時間足の重み付き合算
各時間足のトレンド方向 (+1 / 0 / −1 相当) を、時間足の重要度で重み付けして合算したものが BIAS スコアです。 重みは上位足ほど大きく設定されています。
| TF | 重み | 意味 |
|---|---|---|
| D1 | ±4 | 大局 (最重要) |
| H4 | ±3 | 主戦 |
| H1 | ±2 | 短期 |
| M15 | ±1 | 執行 |
BIAS = Σ (各TFの方向 × そのTFの重み)
例) D1 上昇(+4) + H4 上昇(+3) + H1 上昇(+2) + M15 下降(−1)
= +4 +3 +2 −1 = +8 (強い買い優勢)
例) D1 上昇(+4) + H4 ノートレンド(0) + H1 下降(−2) + M15 下降(−1)
= +4 +0 −2 −1 = +1 (方向が割れている / 様子見寄り) 合計レンジは −10 〜 +10。正の値が大きいほど全時間足が揃って買い方向、負に振れるほど売り方向です。 0 付近は「時間足ごとに方向が食い違っている」状態で、裁量では手を出しにくい局面と読めます。
BIAS スコアの読み方 — 「揃っているか」を見る
BIAS スコアの本質は、数値の大小そのものよりも「上位足と下位足の方向が揃っているか」を 1 目で把握することにあります。
- +7 〜 +10: 大局から執行まで買い方向が揃う。押し目を待つ局面。
- +3 〜 +6: 上位足は買いだが下位足が一部反転。順張りの押し目か、調整の入り口かを構造で見極める。
- −2 〜 +2: 方向が割れている。トレンドフォローには不向き。
- −6 〜 −3 / −10 〜 −7: 上記の売り版。
なぜこの設計なのか
裁量トレードで陥りやすいのが「下位足だけ見て上位足の流れに逆らう」ミスです。BIAS スコアは上位足に大きな重みを置くことで、 大局に沿った方向を常に意識させます。同時に、ADX ゲートでレンジ相場の寄与をゼロにすることで、 「方向感のない相場で無理にトレンドを読む」ことを防ぎます。シンプルな足し算ですが、マルチタイムフレーム分析の要点が凝縮された設計です。
次回は、ダッシュボード下部の「通貨強弱」が 28 通貨ペアからどう 8 通貨の強弱を算出しているかを解説します。